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脳内世界地図ミクロ -楡井ズム増刊号-

 
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即興詩篇

『Phantasmagoria誘導処理機』

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 適正に色気をもよおすストロボ 邪な鬱血に染まる壁
 悲鳴の主はおんなではない もっと裸に近い生傷の愛子
 
 うっすらと開いた瞼から 光と汁とみたくもない現実
 傘蓋に汗しみだして 歯が浮く 顎さえ逃げ出しそうな

 ちぎれていく希美 屋上 アーケードの傍ら 突貫工事の
 はりぼてのような演戯場 ショウステージ 棲家の娘は蜉蝣

 磨り減らされて 押し延ばされて 膚の傷がトタン屋根を
 敷いた床の紋様をなす頃 眼球は支配との共有幻想に欺かる

 溶けて落ちてしまわないように手を伸ばした
 肉が爛れて 網で焼かれて 熔けていく夢をみていた
 夢だった 現実には火はただの熱となり 熱は痛みでしかない
 開閉した扉は粗野から 紛うことなきたしかな現実に連れてきたけれど
 どちらが幸福だったのか こんな窶れたニューロンで何をどう はかればいいの

 坩堝の箍が外れる音 蠱毒の蓋が外れる音 錠が外される音
 よるの酸っぱい空気を吸いこんで 安楽死の塒が息を吹き返す
 
 臓物のすじを見境なく 攻撃してくる 女 女 あれ 男 男
 骨髄のみぞを万遍なく 攻撃してくる 鬼 鬼 夫婦 けだもの

 餌はなかった 二日間 取りあげられていた
 内気になった心臓が生かし続けてくれること 傍迷惑
 木製バット 麺棒 バール 自転車の空気入れ 《無名》
 凝結でかじかんだ脱色した髪を掴まれて 振り回される中空
 夢だった 現実は叩きつけられ 蹴られ 首を締められ 解放

  はるか昔の怒気が 塵になって 隅に固まって
  悲愴が 荒れ狂う 渦となって 隅に逆巻いて
  ちいさな ちいさな穴を つくりだしてくれた
  朝も季節も漏れだしてくることのないちいさな 穴
  けれど かけがえのない 夢を供給してくれる
  誰にも気付かれない 穴 この塒が壊されても
  誰にも気付かれない 穴 誰も 気にしない穴 穴

 夢を吸い出して 脳にくれてやる 箸を啄む胎児
  口移しでもよろこんで ちゅうちゅうする希望
   決して産まれやしない わたしの 幻想の胎児
    一緒に嬲り殺される 腹のなかの空気 希美
     驚いたでしょう こんなに 棲みづらい
      子宮がこの世にあるなんて ほんとに
       非力だったの わたし 莫迦だったの
        関わるんじゃなかった 甘酢の工房
         さきにいっていて 食卓の上を
          片付けておいて すぐ御飯に
           美味しい御飯にしましょうね
            元気が沸くから ね ね 
             それから 安らかに ね
              幸せに 暮らして ね
               そして ようやく
                死にましょう ね
                 だいじょうぶ
                  ね 怖くなんてない怖くなんててない ね
                   ごめん ね

 お父さん お母さん 朱里 幸せでした もういつのことだか忘れてしまったけど
 わたしはわたしで産まれて 幸せでした わたしがわたしかどうか分からないけど
 お父さんの娘に産まれて お母さんの娘に産まれて 朱里の 普通の姉さんとして
 生きてこれたの だからそう幸せでした これが幸せでないなら この血反吐さえ
 幸せのように思えるじゃないの
 ねえ 朱里 わたしはあなたを知らず知らずのうちに苦しめていたのかもしれない
 許して ねえ もういなくなるから 姉さんは あなたの傍から いなくなるから
 許して ねえ もう傷つけないで それは姉さんの あなたの姉さんの 身躯なの
 ねえ 朱里 さようなら ねえ
 お父さん お母さん そんなに速く 行ってしまわれたら 追いつけないじゃない
 なんて まだ 娘のふりしてる
 慣れるかな そのうち お父さん お母さん わたしより早く 慣れちゃだめだよ
 わたしがいなくなっても わたしはいつでも元気でいるのです 遠くても何処でも
 お父さんとお母さんのこと 心配しながら わたしは わたしの幸せを さがすの
 いままでありがとう ようやく
 わたしを幸せにしてくれる 時が 来たみたい ほんとの解放 自由 具現化の夢
 お父さん お母さん わたし お嫁に行きます
 光あふれる余所の国 わたし そこで元気にしています きっと きっとねえ……


 …………………………
      ………………………………………
 …………………………
                  ………………………………………
                           ……………………………

  異臭を纏い
  暴行者たちは拿捕された
  監禁小屋は解体され
  大量の
  血色の濃い塵が
  上空へと舞い上がった
  吸いこんだ夜明けの雲が雹をふらせ震えあがった都会の片隅で
  身を投げた中学生の身躯が
  混凝土にぶつかって
  張り裂けた
  死に際の彼の声を聴きとった
  私は
  父子家庭に育った彼の言葉が
  父の暴力と
  真の孤独に絞め殺された彼の
 「母に呼ばれた気がして」という言葉が
  はじめは理解できなかった
  しかし その朝 そのニュースをみて
  私の左眼が
  夜毎に夢みる この病で
  おんなもおとこもみな殺されていく
  その怖ろしさを知り 夕餉のすべてをぶちまけるに至る。


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