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脳内世界地図ミクロ -楡井ズム増刊号-

 
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即興詩篇

『びいどろ全方位』

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                私たちの皮膚は微視なるうちに、精密な箱を宿しているという。
             箱自体を取り出すことはできまいが、蓋を開くことは可能のようで、
          なかでは青く透き通ったびいどろの球体が、独り中空に浮いているのだ。
       火花を吸い、冥府の砂と灰燼を濾過し、大気を久遠の結晶に封じるかの如き、
    あたかも海原に撃ちおとされた銀河の宝珠であり、天道を転がされ神の玩具だと。
     そうかほんとうにそうだろうか、真空の蒼玉は、連想された物語の賜物なのか
      神話・伝承・童話・奇談・小説によって創出されたまぼろしなのだろうか
       気紛れに取得した休暇(週のなか日の水曜)の午下がりに、気紛れに
        そんなことを思い創めたら無尽蔵に溢る今生への猜疑心、虚栄心
         判じてはいるのだが悪癖は治らず、時半が経った今も居眠りの隙
          非空気の充ちた球体に身を閉じ込めて何物からも拒絶された世界
          あたかも滅んでいった子宮の奥底で、天上天下の夢をみていたい
         そんなことを思うようになってしまって、収まらず、留まらない
        エーテルと呼ぶにも神の気はとうに寂びれ、羊水と呼ぶには
       大切な母体の、その、面影なく、囲っているのは擬態の門
      声や容貌なら甦る時代です。そこに居るようなものだと
     遂に死は空虚を充たされ、鄭重に仕舞われた箱のなか
    常時透き通った硝子となり、受け継がれていくのだ
   そんなことを思うようになってしまった民を殺す
    時代を殺す世代を殺す世界を微視界を殺して
     私たちも死のうか、巨視へと至るより前に
      敢えて巨視界を受容し、遥かなる宇宙で
       暗黒に溶けた霊酒に酔い、眺むならば
        善母の指紋は渦を巻く星雲となって
       蒼いびいどろは気流を纏う親しき惑星
      そうかほんとうにそうだろうか、浮遊水
     自転する鉱石の果実、水族の棲む大伽藍
    街路樹の海、火葬場の夜景、多肢の摩天楼
   大地に記された阿弥陀をなぞるよりも早く
    私たちの腕や顔や、頭蓋のなかの皮膚
     肉という肉に仕舞われたあの精密な箱
      そのなかに仕舞われた各人のびいどろ
       ひと――と呼ばれる歴史書を紐解けば
        この地の、つまり、知と値と血と痴で
         築かれた文明と、民の子宮に刻まれた
          呪詛の意味を直ちに理解できるはずだ
           知は治を生み、値は質に挿げかわり、
            血は乳となって流れ、痴は恥としても
             地には池ができ、びいどろは沈みゆく
              水底に達した余波が新たに渦を生み、
               凝固した砂塵や泥濘に潜む非ずの金
                石化し、火を呑み、純水を吐き、今
                 蒼く透徹な宝玉となり時の軸を跨ぐ
                  遠くまで、迂回してさらに遠くまで
                 だろうか、ほんとうにそうだろうか……
                そうして誰かの皮膚に仕舞われ、発掘を待ち
               箱と呼ぶには豪著な柩を模し、精巧な錠前で以て
              久遠に現れる微視の眼を持つ私たちの誰かを待ち構う
             視界の靄を結露させ、溜め込んでおく場所として後に継ぐ
            涸れたときにはそこから潤いを求め、荒れたときには波を静め
           遠きより眺め、近きにて凝らし、細部に触れ、象形の翳影に恋せよ
          抛っては失くし、捜しては見付け、態度を改め、憧憬の念に拿捕される
         材料を拵え、角度を測り、そこに鍛錬を識るも遍く晶系の徒に囚われる始末
        滑らかに美しく妙味と巧みな高貴さと深遠と自由と不可能を、僅かな小径に込め
       どこかの美麗たる子宮に、唯一無二のびいどろを埋め、その創生の法を承継していく
      宿命は命を宿し、運命は命を運び、ほか諸々を書付け、虹彩と網膜を封じ込めたびいどろ
     私たちのびいどろ、巡礼してさらに私だけのびいどろ、私のびいどろ、いつかは皆のびいどろ
    眼を瞠るだけでなく耳を傾ければ、呼気、声、嘆きの溜息、エーテルと熱量そのオーラ、オーロラ
   油膜のなかの虹彩に昼と夜が集えば、悲喜交々渦を巻き、未来を見据える透明度に宇宙が産声を上げる

                         北斗

                        無常の水
                       漱がれて育ち
                      漸く整う意識の隙
               西刹    黄金の卵、火山色の脳    東亜
                      涙が成す刹那の間
                       時は凝固する
                        星の誕生

                         南無 


                   そうか……真実にそうだろうか。


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