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脳内世界地図ミクロ -楡井ズム増刊号-

 
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即興詩篇

『遺産Ⅰ』

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 小夜よりも深く 胃液よりも甘く 抱く掻く後悔を束ねた鬣

三和土をあがってくる貧弱な木馬の背に 弔文を震えるコンビニエンスの薄墨で記す
見れぬ間にきみは変わってしまったね、と胎児の写真は日付を指差し 面映く笑って
いまはまだ遠き土地 星座も異なる熱帯夜に 照れつつ撮った幽明のプールサイドよ
一週間が過ぎた きっと一年が過ぎ 過ぎてから気付くのだ 過ぎてしまったことを

 教師よりも優しく 恋人より厳しく 叱る泣くあんなにも愛していた面影

蜘蛛の巣の張った天井を何人に見られることも厭わない それが誰かの意中の人でも
帰郷して咳払いをした 胸が痛む言い訳ができた 弱弱しく見せる台本は整っていた
安っぽいアクリル板でしか感じ得ない呼吸 棺に詰まった霊氷が疑問符を浮かべても
変わってしまったのは面影の方 旅行のさなか 貴女はぼくの幻想でのみ生きていた

 蜥蜴よりも鈍く 朧月より疾疾と 揺らぐ消える午前二時の連絡船

雨天は去り神の御加護と撫で下ろした肩 はて 悲喜交々の渦中に宿命とデジャヴュ
歯車は 賛美歌奏でず蝋燭も燃やせず涙も流せはしないけど 故に親しき人を集めた
花束はどれも似たり寄ったり けれど如何だろう 見渡して歓ぶ貴女の笑顔が見える
嵐には持ち堪えた心の臓 肺の臓 一息ついて訪ね来る日常に瓦解するまるで砂の城

 天使より悪戯に 少女より純粋に 思い描いた母子像はどうせ貴女の夢のなか


いまはまだ第一章 時間はまだある 遺書を認める心持では誰の心も揺さぶれぬ
分かっていたよ 詩の才がないことぐらい
けれど才がなくても愛はあったさ たとえば貴女の遺作のように
一夜の終に家族の心に触れられたならそれが幸福
狂う手前で文字を弾き出し 現実に背く生業の屍 病の痛みも薬の苦味も
灼かれてしまった貴女の瞳が見届けてきた世界の彩りも 引き継ぐことはできないけれど

 たとえばぼくに貴女がいたように ぼくには言葉があり物語がある
 たとえば貴女にぼくがいたように 稚けな我が子がほらこんなにも たくさん

祖母に抱いてもらえなかった我が子を他人は残滓と呼ぶけれど きっと貴女は褒めてくれる
端正な孫だと

 我が身の生きた証だと

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