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脳内世界地図ミクロ -楡井ズム増刊号-

 
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発狂する文学

24.3.11『慢性堕落気症の患者』

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 もはや、病気なのだ。
 日常生活に大きな影響はないにも関わらず、とある意味では多大な不調を引き起こす。このことをひとまず堕落と名付けてみる。地に堕ちた天使の憐憫な姿を想像させよう。舞台は曠野でよい。鹿や馬が走っていなくてもよい、日に曝されすぎて光合成を忘れ、枯渇にも至らなくなったグリーングラス、ズブロッカ、この場合、草の種類は詳細である必要はない。気候は安直にサバンナのような、とでも形容しておこうか。個人的には準乾燥気候とでもしておきたい。
 生き物が棲めぬ土地にこそ神聖なる六枚羽は似合うだろうし、何より想像を超越した乾燥地帯というのは気に召さない。長草は青々としていなくてもよいし、ちらほらと見受けられる程度で構わないが、ないよりはあった方がよい。あまり図に乗ると曠野という舞台設定からかけ離れてしまうので気をつけなければならない。
 そのようにして用意された曠野に、風が吹くと、砂塵が巻き起こるのが常だ。
 吹いては止み、時に蚊が集るような嫌悪感、霧に鎖されるような窒息感、閉塞感、窮屈感、もしかこのまま砂に取り込まれて身動きが取れなくなるのではないかという焦燥感さえ引き起こせればよい。
 目はつむっているだろう。でなければ眼球に悪い。
 音を感じて、瞼の僅かな隙間から覗けた印象もあって、砂塵が止んだことを知る。
 そこにはぼやけた曠野が広がっており、地面からせり上がった古代遺跡の精巧な彫刻のように石化した六枚羽が剥き出しになっている。石化した、というのは過剰な設定である。天使が下界で事切れることにより石化するというのは神秘であるが、因果律に欠いている。そこには個人的なトラウマが潜んでいるように思えるのだが、どうだろうか。
 石化せずに純白の肌理の細かい羽毛が砂に塗れて散らばっている様子は、どうも単純に野鳥の亡骸を思い起こさせる。天使の屍には没後も神性を保って頂きたい。むしろ生々しく描写することによって堕落を演出するのもよいが、ここでの問題は神性の崩壊などではない。無垢の固執なのだ。
 ここまで語れば、一先ず事の真意を理解するのに効果的だろう。

 小生が語りたいのは、そういうことなのだ、と彼は語っている。
 彼は何度も天使の墜落を目撃しているという。その度、彼の生気は奪われて彼自身が凝り固まってしまい、何物も手につかなくなるという状況がままある。
 彼は墜落であると固持するが、墜落だと事故のようではないか。
 事実上、原因は彼自身のなかにあって、天使もまた天界を追われた身なのだ。決して、事故ではない。
 だから彼に訂正を申し告げるのだ。それは堕落であって墜落ではない。
 彼はその言葉を胸に秘めて、今なお這い上がってこようとしない。名付けたのが悪いのか。堕落気きったままの彼の性根が悪いのか。私が記憶しているのはそんなところだ。
 かく云う私だって人並みよりか記憶力が乏しい男である。以上の彼との遣り取りが何時ぞや交わされたものなのか明瞭とはしていない。その上、互いに妄執が過ぎるところがある。堕落気症なぞという症名はおろか、私たちは互いの存在の違いを明瞭とは言い当てられないのである。
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