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脳内世界地図ミクロ -楡井ズム増刊号-

 
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即興詩篇

『誰かの火』冬

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 冬を融かす誰かの火だ
 青白いペイブメントに落ちるポケットティッシュを木枯らしが押さえつけ、年の瀬の雑踏が足早に凍気を切り裂いていく
 駅前の地下道、冬の森の、グズリが越冬のため拵えた塒のような、穴蔵に雪は散らない
 代わりに結晶は水と融解して、ピンクのマフラーが履いたブーツの底を滑らした

 硝子細工で生ままれた城に、小公女が生まれて、王と王妃は眉根をしかめる
 跡継ぎが欲しかったのかと窓辺、小ぶりのステンドグラスのなかから天使が笑む
 あどけない表情は曇天に消え、硝子の犇めき合うは天上の音色と化す、その一部始終をきみは揺り籠のなかで聞いている
 悔やむ手筈もまだ知らぬ赤子であるきみに、天使は手とり足とり、胎児の生業を教え、耳元で祝詞を囁くのだった

 喫煙所近くの御影石のベンチに腰掛、きみは泣いている
 転んだ痛み、冷たさ、恥じらい怒り一辺倒でなく、情けなさ、運の悪さもあったろう
 きょうはついてない日
 日記をつけていたら、迷わずきみはそう記しただろう、記す気力もなかったに違いないが
 凝り固まった関係、凍りついた二人は今日まで確かに存在した、僅かな明滅は昨日までに費やし、今夜漸く消灯したそれだけのこと
 きみはまだ受け入れられていないが、二週間後、新たな出逢いがあることを天使は知っている
 窓張りのカフェに鎮座し、雑踏を眺めながら飲むココアで、きみは息を吹き返す、甘く蕩ける唇に塗られた糖分、カカオ、立ち去った男の温もりとは程遠い、されど心地良い

 繰り返す出逢いと別れ、運命の輪
       アドバルーンと天使の輪

 宿木と街灯の火にきみ、“大丈夫”と謳う
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