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脳内世界地図ミクロ -楡井ズム増刊号-

 
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即興詩篇

『誰かの火』春

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 春のうららの誰かの火だ
 ミントの苦味をはじめて知った小学三年生の春にだか、当時まだ部屋のほとんどを占領していた机に筋を彫った
 はじめて握った彫刻刀は平刀だったか、三角だったか
 幼げにも身を焦がす情熱にはじめて草臥れた夜だった

 天板を離れた木屑は煙となって、ガムのように伸び、心の臓を鷲掴みにする
 電気スタンドの前に現る蜃気楼
 偏光世界に棚引く天馬の鬣
 王冠の縁 酋長の一声
 天才音楽家の他愛ないが完全なる聖譚曲
 脳に刹那に、髄に微塵に、
 充足したマントルの影響は少年の心はおろか、青い惑星をも凌駕して、蝋化し溢れるミネラルの水

 やがて小川となり都市に流れ込む我が血潮
 その夢想
 堰きとめられた幼稚園脇の大橋のほとりでランドセルが辿り着くのを待つ中学の僕

 突き出た物差し、濯がれたリコーダー、今日はあの日だったから入らずに終わった体育用の水着も濡れてしまった
 昼食を忘れ、教師に諭され、小遣いを貰い、パンを買う、涙ながらに教室の中央、孤立しながらパンを食む
 帰ったら母親に叱られる
 叱られてから机に向かう
 溝を掘る 筋を彫る
 勉強に厭きて人差し指でなぞった二十数本の筋
 刻み込んだのは遑の言霊と、溜め息と、やがて灰化していく誰かの蛹
 幼き頃に吐いた絹糸で、頑丈に拵えた繭

 いまではもう地に潜れぬ毒蛾の夢
            桜色の死神の夢

 燐寸を擦れば、僕はいつでも死ぬことが出来る、昔も今も
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