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脳内世界地図ミクロ -楡井ズム増刊号-

 
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即興詩篇

『Kugane』

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殺された妊婦の腹に埋めてあったのは、胎児の頭部より余程大きなKuganeの球体だった。通りかかった蠅母が卵管も辷る、なめらかな表面に二億の卵を産み付け咽び泣いたが終ぞ孵ることはなかった。彼氏曰く是即ち琳瑯だった。元から汚染されていたのだった。蠅母の芳醇な乳を旨そうに、彼氏は飲む。



昨晩わたしが電話をかけた時にはもう、彼氏は筆を折って四畳半にふんぞり返りながら『滅菌哀歌』を口遊んでいたのだった。もういいのだ、もういいのだ、と コーラス毎に挿入される彼氏の本音は、背後を過ぎる夏虫の羽搏きに化粧され、哀しさを通り越しわたしは噴出した。糸解れた畳に乳房を擦りつけた。


次は砂の城、明くるは象牙の大尖塔。鐚一文も負けてはならぬ。おまえは霞の傀儡。気を許せば奈落、無駄な白濁、浮かされて孤独。お菊の門穿られ、掻き出さ れた黄金の無価値を暴露れる。こっ恥ずかしや、そのうえ不能じゃ男が廃る、畜生男が雄健蒼勁、あアとんととんと。(『滅菌哀歌』)


耳鳴りに似て煩わしく、蟲すだきに似て愛くるしく、彼氏の歌声につい和む。会いたいのう会いたいのう、と秋の砂浜に寄せた口説きの主語は何か。どうせおま えは犯したいだけだろう。夏のおまえも、秋のおまえも、夏の少女と秋の娼婦と、冬の妊婦を犯し、そして末期にわたしを抱き寄せるのだ。手軽く。

火の蟲群がった畳のうえの屍に氷砂糖を塗したら、ぬらりと何時ぞやの蠅の舌が躍り出た。紅く刻刻の烈しく熱い舌。電波の向かいじゃよく通し見えぬが、そこ には寝たきりの母親がおり、おまえの帰りを待っているのだろう。わたしは昨昼間に会った。謦咳に接した。おまえを産み落とした泥臭い、しわぶき。

わたしは嗄れた声でおまえの名を呼ぶ積りもなければ、おまえの追い縋る乳房になる積りもない。胸許は仕舞った。授けない、授けてなるものか。おまえから逃 ける為ならば何方か捥がれても構わない。逐電の果てに女を棄てようが、わたしはおまえに殺された妊婦、おまえに殺されたKuganeの乳房だ。


孕むも流すも昼はよそう。陽光の下では罪も盛る。大いに夜を待ち、其れからズラかろう。頚からうえだけ置き去りにして、軈て其処から新芽が生える。ほろ切 なさも昇華してしまうかな。Kugane、Sirogane、Tama、憾まずして無碍な独創、あアよきことかなよきことかな。(『滅菌哀歌』)


殺された妊婦の腹に埋めてあったのは、胎児の頭部より余程大きなKuganeの球体だった。通りかかった蠅母を貪り、不貞腐れる身重の天女。躄る天女の下 腹部から懐かしの綺羅、在りし日の乳房、あるいは仮初の雛。二億のうちの一つであり、万恒河沙の凡てである。去る彼女曰く、是又即ち琳瑯だった。



『Kugane』
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