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脳内世界地図ミクロ -楡井ズム増刊号-

 
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即興詩篇

『砂象』

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 何処へと行けば象が手に入る。

 牙象の群れ、砂塵、南から来た旅人を出迎える。遠く離れた海辺から、季節風に乗り、何処へと行けば、象が手に入る。 その面影を怪物とみてはいけない。帝国の頂に聳える、砦の分厚い煉瓦壁と思ってもいけない。図体こそ仔猫の戯れに愛想を尽かし膨れ上がった毛玉のようだし、膚は……毛に隠れてみえないのだが、合成革には出せぬ滑りと艶やかさを持つに違いないのだ。

 象よ。父よ。
 牙を、一欠けら、星に似せ。
 象よ、母よ。
 眦を、ひと瞑り、夢をみせ。
 象よ、兄よ。
 標を、猛々しき歩みで、草を踏め。
 象よ、姉よ。
 子を、守って導きつつ、歌を歌え。
 象よ、祖父よ。
 傍らの祖母よ。
 懐深き草原に、掌から溢るる曠野に、

 歩み出した一歩は砂地に残り、
 足跡は星霜を含んで石となり、
 その宙に漂う砂粒の靄を、誰かが君と呼ぶだろう。

 あれは麒麟ではない。建材を吊るすクレーンだ。今やサバンナは天へ天へ。地に植えられた銀のビルディングの隙間を縫って、砂嵐。
 アスファルトに寝そべり、薄汚れた地上の滓を掌でざらざら擦りつけながら、地下に走る連結車両の嘶きを聞くと、

そこに逃げ込んだか。

 象よ、砂で出来た象よ。
 君が恋しくて仕方がない。

 世に黄砂降る。都市は、気管支を病んだ子どもをかわいそうと云う。



-Orphan-
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