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脳内世界地図ミクロ -楡井ズム増刊号-

 
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即興詩篇

『藁』

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河を舞う。氾濫している河を、跋扈する振り子が。歯に毒薬を塗られた少女が妖精にでもなって終世の鐘を撞きにきたのか。偶然にもたったいま文庫本を読み終えたところだった。
空が濁る。夕べの雨から、空気はだいぶ湿り気を孕んで、四方八方から透明な従者に監視されているような気分だ。彼が橋桁から突き落とされる風景を、見届けていたに違いない。
声が凄む。颪が街路樹を叩くのだ。さぞや痛いに違いない。母体たる蒼穹でさえ、どこか涼しげな表情の向こうに、諦めの意中を覗かせる。眦は飛行する屍に横切られて、瞬ける。

あの屍は、家を失くした男。
地下道を追い出されて、少年たちに蹴り落とされた橋の名は、逢初め橋。

腹に爆竹を巻いた道化を慕い、夜空に散っていくならまだしも、
彼を見捨てた空は透き徹った春めく青。
見棄てた街路樹が虫に食われて、葉を粉々にし、撒かれた薬で爛れていくように、
入道雲の涯てから飛んでくる鶴嘴は、首の根っこを目がけてくる。
吊るのが善か、斬るのが善か、悩み明け暮れた頃、泥をかぶった男が河岸に現れ、
利き手を挙げて、やあと云う。

彼は元気でやっている。
水底で浚われ、雨水を呑み、川虫に食われてなお、彼を知る人たちの誰にも理解のしようがない彼だけの寝室で、彼は今日もあくびを鳴らすのだ。
そう思うことが彼にとっての幸福でないのなら、何故この空は堂々として青い。


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